『3DCAD』と『3Dプリンター』で、プラモデル自作ブログ

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3Dプリンターの基礎【熱溶解積層方式と光造形方式の違いとは?】

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これから3Dプリンターを始めてみたいと思っている人に、初心者が扱いやすい3Dプリンターが大きく分けて2種類あることをお話しします。

 

それが、以下の2つです。

 

結論から言うとフィギアやミニチュアサイズの小物やプラモデルのパーツといった細かい造形物を作りたい場合は、光造形方式の3Dプリンターがいいです。

日用品や小物といった細かい精度を求めないなら、熱溶解積層方式の3Dプリンターがいいと思います。

 

それぞれの特徴をざっくりまとめると、こんな感じです。

【熱溶解積層方式】

  • ひも状の材料を熱で溶かして、上に層を積み上げて作る
  • 基本的に細かいデザインを作ることには向かない
  • 材料や造形物の取り扱いが比較的安全

 

【光造形方式】

  • 液状の材料に特殊な光で固めて、下に層を積み上げて作る
  • プラモデルやフィギアなどの細かい造形物を作りたい人向け
  • 材料や造形物の取り扱いに少し注意が必要

 

では、細かな違いについて説明していきます。

個人的におすすめの各プリンターのレビュー動画も紹介しますので、そちらも参考にしてみて下さい。

 

 

1. 印刷の仕組み

「熱溶解式3Dプリンターと、「光造形3Dプリンターでは造形物を印刷するための材料や印刷方法が大きく違います。

 

違いを説明する前に、前提知識を1つ話しておきます。

それはどちらのプリンターも、立体物を造形する際は「層」を積み重ねて印刷することです。

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上図のように3Dのデータを横にスライスして、1層1層積み重ねて印刷していきます。

(ケーキのミルフィーユを作る感じです。)

これを踏まえた上で、各プリンターの違いを説明していきます。

 

熱溶解積層方式

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ひも状の「フィラメント」と呼ばれる材料を熱で溶かしながら、造形物の形に添って印刷していきます。

材料を注入するためのアームが上に付いていて、造形物の形に合わせて上下左右にアームが動きます。

 

造形物が作られる土台は下に付いていて、上から溶かした材料で層を作っていきます。

なので印刷は下から上に積みあがって造形されていきます。

 

光造形方式

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「レジン」と呼ばれる液体の材料に特殊な光を当てることで、液体が硬化して立体物が出来上がります。

特殊な光は、造形物の形に合わせて照射されます。

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実際のプリンターが、こんな感じ。

下にある灰色の液体が、レジンです。

 

造形物が作られる土台はアーム部分と一体化しており、上下に動きます。

そして下から特殊な光を当てて固めるので、造形物は上から下に積みあがって造形されていきます。

 

 

2. 造形精度

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どれだけ細かいデザインや精度の高い造形ができるかについては、光造形3Dプリンターのほうが精度が高いです。

 

熱溶解積層方式

熱溶解積層の特徴として小さなパーツの造形が不安定で、もとの3Dデータよりも太くなってしまったりディティールが潰れてしまったりすることが多いです。

 

また「積層痕」と呼ばれる造形物に横に入ってしまうラインが目立ちやすいです。

ただし積層痕は、ヤスリがけなどの表面処理をすれば消えます。

 

 

光造形方式

熱溶解積層方式よりも、小さい部品や細かいディティールの造形ができます。

例えば戦艦や戦闘機のモデルや、人型のフィギアなどを作成するときに最適です。

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ただ熱溶解積層よりも目立ちにくいですが、造形物によっては積層痕ができてしまいます。

 

3. 印刷スピード

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印刷スピードに関して言うと、熱溶解積層か光造形かどうかによってはあまり差がないと思います。

(※複数個の造形物を同時に印刷する場合は、熱溶解積層の方が時間はかかります。)

印刷スピードはどちらも共通して、造形物の大きさ(高さ)・積層の細かさ・プリンターの性能の要素で大きく異なります。

 

以下の点は熱溶解積層タイプにも、光造形タイプにも当てはまる要素です。

  1. 造形物の大きさ(高さ):造形物の高さが高いほど、印刷に時間がかかります。
  2. 積層の細かさ:造形物の積層が薄いほど積層の数は増えるので、印刷に時間がかかります。(積層の厚さは、ある程度設定できます。)
  3. プリンターの性能:ある程度値段が高い機種の方が、高性能な部品を使っているので印刷時間は短いです。

 

あくまで目安ですが4万円くらいの3Dプリンターで、高さが5cmくらいの造形物を作る場合は、4時間ほどで印刷できます。

10cmくらいだと、7~8時間くらいかかります。

 

 

4. 扱いやすさ・安全性

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初心者の方にとって、プリンターの扱いやすさや安全面は大事な要素ですよね?

結論から言うと、熱溶解積層方式の方が安全で扱いやすいと思います。

 

理由は、材料の違いにあります。

 

熱溶解積層方式

材料は「フィラメント」と呼ばれる、「糸状」の樹脂を使用します。

【フィラメントとは、これのこと】

 

フィラメントの素材は多種多様ですが、一般的にプラモデルなどに使われるプラスチックのような素材です。

手に触れても特に問題がないものが多いのが、フィラメントの特徴です。

 

後述するレジンよりも安全性が高いだけでなく、柔らかい素材のフィラメントを使用することで、ゴムのような弾力のある造形物を作ることもできます。

 

光造形方式

「レジン」と呼ばれる「液体状」の材料を使います。

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肌に触れると炎症を起こす可能性もあり、ゴム手袋の着用が推奨されています。

【レジンとは、これのこと】

 

また、通常のレジンは印刷が完了した後にIPAという溶剤で洗浄する必要があります。

加えて印刷したレジンは、UVライトを当てて硬化させる必要もあります。

熱溶解積層方式では洗浄を行う手間が無いので、取り扱いやすいです。

 

ただレジンの中にはIPA洗浄液を使わず、水で洗浄する「水洗いレジン」という種類もあります。

 

5. 初期セットアップの手間

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熱溶解積層方式は安価なタイプだと、自分で組み立てるタイプの商品が多いです。

この組み立て作業が、少し難しいです。

対して光造形は、組み立てる商品は特にありません。

 

またどちらのプリンターも、「レベリング」と呼ばれる印刷の開始地点を調整するセットアップ作業が必要です。

この作業が正確に行えていないと、印刷が上手くいきません。

 

熱溶解積層方式

パーツ数や細かい部品があって、初心者が組み立てるには組み立て動画を見ながらやった方がいいと思います。

 

ドライバーを使った作業や複雑な工程もあるみたいなので、初心者さんが挑戦する際は慎重に行いましょう。

詳しい組み立てについては、後程紹介するおすすめ動画を見ればわかると思います。

 

光造形方式

複雑な組み立て作業が無いため、比較的セットアップは楽です。

(プリンターの蓋や土台部分のねじ止めや、動作チェックをするくらい)

 

自分が持っている光造形プリンターのセットアップ方法は、こちらの記事で解説しているので参考までにチェックしてみて下さい。

 

6. 価格

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プリンター本体の価格は、熱溶解積層方式がわずかに安いくらいです。

昔は光造形3Dプリンターの方が高かったのですが、1~2万円程度の安いタイプの機種も発売されていて、金額の差があまりなくなってきました。

 

そして費用面で忘れてはいけないのが、造形物を作るための材料費です。

なので材料の金額の違いにも、触れていきます。

(あとは、「金属のスクレーパー」や「ロウト」などの細かなオプションパーツも必要です。)

 

熱溶解積層方式

熱溶解積層方式の3Dプリンターは、だいたい安いものだと2万円くらいです。

10万円以上の高価な物もありますが、初心者さんが買うとしても4~7万円くらいの範囲の機種がいいと思います。

値段の違いは、主に造形できる材料の多さ、造形精度、印刷できる造形物の大きさに影響してきます。

例えば大型の造形物を作りたい人は、比較的値段が高い大型のプリンターを買う必要があります。

 

【参考までに、比較的安めの熱溶解積層の3Dプリンターです。】

 

また、フィラメントと呼ばれる材料を買う必要もあります。

これは、だいたい2,000円から4,000円くらいで購入できます。

フィラメントの種類は豊富で、これ以外にも弾力性のあるゴム質の物もあります。

 

光造形方式

光造形方式の3Dプリンターも、だいたい安いものだと2万円くらいです。

一般的なタイプは3万~5万くらいです。

値段が高いほど、印刷精度が高く印刷時間も早い傾向があります。

また熱溶解と同様に大型の造形物を作りたい人は、値段の高い大型のプリンターを買う必要があります。

 

材料は、レジンと呼ばれる液体を使用します。

レジンの値段は、500mlで3,000円(1,000mlで6,000円)くらいです。

フィラメントと比べてどちらがお得かというと、個人的にフィラメントの方が値段に対してより多くの造形物を作れるイメージです。

 

以上が、値段の比較でした。

個人的には3~5万円程度のプリンターを買うのが無難な気がします。

 

しかし熱溶解積層も光造形プリンターも2万円くらいの安い機種でも、それなりの造形精度はあります。

初心者さんの最初の一台目は、安いので様子を見てみるのも良いと思います。

 

7. その他の細かい点の違い

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プリンターを使う環境によっても、どちらを購入するかは大事な判断材料になると思います。

以下の細かな違いも、重要な点だと思うのでチェックしてみましょう。

 

熱溶解積層方式

  • 材料の臭い:あまり気にならない
  • 印刷音:印刷音が比較的うるさい。(アームが動く音です。)
  • 後処理:印刷が完成したら、光造形のように後処理をする必要がない。

 

光造形方式

  • 材料の臭い:レジンが少し臭い(あと造形物を洗浄するIPA洗浄液も臭い)
  • 印刷音:熱溶解ほどではないが、炊飯器くらいの音が出る(ファンが回る音です)
  • 後処理:印刷した造形物を洗浄して、一次硬化・二次硬化をする必要がある

 

熱溶解積層方式は、印刷音がうるさいのがネックです。

光造形方式は印刷が終わったら完了ではなくて、造形物を洗浄したり硬化させたりする手間がかかってしまいます。

 

おすすめのレビュー動画

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文字の説明だけだとよくわからないと感じる方もいらっしゃると思うので、3Dプリンターのおすすめ動画を紹介します。

 

以下に紹介するのは、自分が3Dプリンターを購入する上で参考にさせていただいた動画です。

 

熱溶解積層方式

こちらは主に、戦艦や建造物を製作している方の動画です。

普段は光造形3Dプリンターをメインに使っている方なのですが、熱溶解積層のレビューもしているので紹介させていただきました。

www.youtube.com

動画ではメリットの部分以外にもデメリットの部分も説明している点が、購入の際に参考になると思います。

組み立ての大変さや組み立て時の注意点などもわかって、勉強になりました。

 

光造形方式

熱溶解積層と同じ方が作成した、光造形方式のレビュー動画です。

この動画で紹介しているプリンターをオススメしている訳ではないですが、光造形プリンターを購入する際にチェックしておくべきポイントが一通りわかると思います。

www.youtube.com

 

個人的にこの動画を投稿している「宮間めさの」さんの動画は、ギャグ要素もあって普通に見ていて楽しい動画です。

 

 

 

まとめ

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では、それぞれのプリンターについて特徴をまとめていきます。

 

熱溶解積層方式

  • 音が少しうるさいので、騒音対策はしておこう
  • 日用品を作りたいなら、いろんな素材で作れる熱溶解積層がおすすめ
  • 組み立てが大変な商品もあるため、事前に組み立て動画はチェックしておこう

 

光造形方式

  • 印刷中の臭いが気になる場合があるので、気を付けよう
  • 細かい造形をつくれるので、プラモデルなどを作りたい人におすすめ
  • レジンの取り扱いが少し大変なので注意が必要

 

以上が、まとめでした。

 

どちらのプリンターを購入するべきかは、「何を作りたいか」によって変わってきます。

今回紹介した内容を参考に、自分に適したプリンターを購入してみましょう。

(昔と比べたら値段が安いのに高性能なプリンターが多く出てきているので、購入しやすくはなっていると思います。)

 

終わり